百舌が枯木で(第27号 2003年4月)

百舌(もず)が枯木でないている」という、サトウ・ハチローの詩があります。自分を取り巻いている百舌や綿引車や水車。何ひとつ以前と変わらない情景なのに、足りないものがある。兄(あん)さの薪を割る音が無い。そして

「兄さは満州へ行っただよ 鉄砲が涙に光っただ 百舌よ寒いと鳴くでねえ 兄さはもっと寒いだぞ」

と歌います。

そして今、同じように夫や子供が傍にいない寂しさを、何十万もの人達がアメリカやイギリスで味わっています。そんな人達に心を残しながら、戦場で逝った人達がいます。そして愛しい人の死に涙している人達が、英米にも、イラクにもいます。

一昨年9月11日のテロで肉親を失った人で、対イラク戦に反対している人もいます。「私のように悲しむ人を、これ以上増やさないで!」 愛しい人を喪(うしな)った心の疼(うず)きが、伝わってくるような気がします。

このような人々の悲しみを、どうしたら癒せるのでしょうか。戦争指導者には、このような悲しみを作り出すことはできても、癒すことはできません。

戦争を国際紛争の最終決着手段としていた20世紀は、幾多の大戦争を経験しました。しかし21世紀の今も、人間同士が殺し合い、憎悪を拡大させ、新しい流血を呼び起こしています。そのひとつが、一昨年9月の同時テロだったと思います。そして今、イラクで新しい血が流されています。

何時になれば、紛争解決を戦力に委ねるという哀しさに、決別できるのでしょうか。国籍や人種、宗教によって分断されていた私達が、同じ血と肉、喜び悲しみを分かち持つ人間同士として、繋がり合う世界を築くこと。それは単なる夢物語でしょうか。

ジョン・レノンは「IMAGINE」の中で歌っています。

「あなたは、私を夢想家と言うかもしれない。

でも、私一人が夢を見ている訳じゃない。

いつの日か、あなたも夢を共に描いてくれたら、

世界中の人が、平和に生を分かち合うだろう」

私は夢を描き続けたいと思います。しかし、夢を現実にするための叡智とともに、夢を語る勇気、人間を信じる勇気も必要だと思います。そんな叡智と勇気を、共に創り出して行きたいと思います。

(所長 林 光行)

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