残暑お見舞い申し上げます(第22号 1999年8月)

暑い日の続く7月末、シェアリングレター第12号で紹介させて頂いた西田社長から、お電話を頂きました。東京の病院からです。3週間程検査入院しておられるとのことです。

お医者さんの説明では悪性の癌らしく、8月上旬には胃を全て摘出するが手術が上手くいくとは限らない、また、手術が成功しても5年後の生存率は4割とのこと。ついては相談したいことがあるから手術前に来て欲しいと仰います。社長のお話しでは、経営者が突然死ぬ訳にはいかない、3ヶ月でも半年でも会社を引継がせる為の準備の時間が要るから、癌なら告知するよう、予(かね)てから家族に言ってあったので、検査の結果、直ちに告知を受けたそうです。

御茶ノ水の病室を訪ねると、沢山のメモ書きを出されました。遺言の下書きです。見れば御自身の死後は誰を社長に、社長たる者の心得は、今後の経営指針は、斯(か)く生きよ、よろず林に相談せよ…。耐え難いと思える状況にあっても、事業の継続と発展のために、可能な限りを尽くそうとしておられます。また規則正しい入院生活故か、少し痩せられたものの、張りのあるお顔をなさっています。私だったら、余命幾許もないと宣告され1ヶ月近く入院すると、それだけで参ってしまい、後悔や不安に想いは千々に乱れ、今なすべきことに取組めそうにありません。

帰阪して2~3日後、また電話です。「センセ、最終検査の結果、癌細胞がどないしても見つかれへんので、手術せんでようなりました。胃潰瘍らしいですわ」。電話を受けた私は破顔一笑。事務所の皆に電話の内容を伝えると「ホント!? ウワーッ! よかった!」。結果としては、重篤な潰瘍の誤診だったのです。

それにしても、死を前にした西田社長の生き様には驚嘆させられました。抗(あらが)い難い運命とも思える事態に対し、争わず、また唯々(いい)諾々と従うでなく、今の己が現実にできることに専心する。これこそが運命を切り拓き、自ら自分自身の人生を打立てる、即ち<立命>の道だと感じ入った次第です。

(所長 林 光行)

ページトップへ

Copyright © 2002-2007 Hayashi Mitsuyuki Accounting Office. All Rights Reserved.
2002-01-01 Published,2007-12-25Revised.