粉飾決算(第19号 1998年4月)

前号のシェアリングレターで触れました山一證券。とうとう前会長・前社長・元副社長の3人が逮捕される事態となりました。容疑は有価証券報告書の虚偽記載です。ご存じの方も多いと思いますが、有価証券報告書には会社の決算書が記載されているのですが、その決算書に記載すべき多額の負債が記載されていなかった、つまり粉飾決算がその容疑です。

手許の広辞苑には、粉飾とは

「(1)紅・白粉(おしろい)でかざること。(2)よそおいかざること。立派に見せかけること」

であり、粉飾決算とは

「会社の資産内容・収支状況をよく見せるために、貸借対照表や損益計算書の数字をごまかすこと」

と書いてあります。

現代社会の繁栄は、多くの資金を要する企業が継続的に事業を行うことによってもたらされています。そのことが可能となるのは、成績の良い企業にはより多くの投資家が集まり、成績の悪い企業からは投資家が逃げて行くという資本主義の仕組みにあります。勿論、所詮は「ゼニ」儲けが目的ですから多くの弊害もありますが、今の私たちの物質的豊かさがこの資本主義の制度によって獲得されていることは厳然たる事実です。さて、その企業の成績は決算書に示され、その正しさを担保しているのが会計士監査です。また投資家が企業に投資したりそれを回収したりするのが証券市場です。そのような意味で、「会計」や「証券市場」現代社会を支える前提と言えます。従って経理公開会社の「粉飾決算」は社会的罪悪なのです。そのへんの建設業者が公共工事入札のために白粉を付けるのとは訳が違います。もし山一證券が粉飾決算を行っていたとすれば(事実のほどは裁判の結果を待たなくてはわかりませんが)、両替商が偽金(にせがね)造りに励んでいたような話です。

粉飾決算あるいは粉飾まがいの決算を行う経営者の多くは、そのような自覚が無く、従って罪の意識に乏しいようです。それにしても何故そんなことをするのでしょうか。どうも、それは「取り敢えずその場をなんとかごまかしたい」「メンツ・体面を保ちたい」「そのうちなんとかなる」と考えがちな私達の性癖にあるようです。小さな嘘が大きな嘘に、粉飾まがいが正真正銘の粉飾になります。

さて日常の私達はどうでしょうか。私の場合、残念なことですが、ついつい「良く思われたい」と感じて、正直なありのままの自分でおれないことがあります。だって、ありのままの飾らない本当の自分を、人は受け容れてくれるのでしょうか。とても不安です。しかしそれでは何時までたっても目の前の人と安心して付き合えない。

自分が自分の生活の中で、粉飾をして生きていないか。少し見直してみようと思います。

(所長 林 光行)

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