もう年だから(第12号 1995年12月)

「もう年だから」。そんな言葉を聞きます。「こんな年になって今更~できない」という意味のようです。でも「こんな年」というのは一体どんな「年」なのでしょうか。

先日、散髪屋さんでこんな会話を耳にしました。「店」は五十才位の散髪屋のおやじさんで、「客」は昔不良少年とおぼしき三十手前の若い男性です。

店: 兄ちゃんは若こうてエエナァー。人生これからや。何でもできるナー。
オッチャンも、もういっぺん、そんな年に戻りたいわ。
客: 何言うてんねんな、オッチャン。オレは若い頃は遊んでばっかりで、こないなって。
いまから学生時代やり直されへんし。もう年やで。嫁ハン貰わなアカンし……

お互いが、自分の過去が取返せないことをボヤきながら会話は続きます。幾ら話しても、若い客は過ぎ去った日々に眼が行き、これからの人生の無限の可能性には気が付かないようです。

店のあるじ主は客に若き日の自分自身を見、懸命に話しています。しかし、店の主が人生の黄昏時を迎える頃、今現在の自分に出会ったなら「まだまだお前は若い。お前にはまだまだ出来ることが一杯あるぞ!」と叫ばずには居れないのではないでしょうか。

サミュエル・ウルマン

「人生は希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる」

と言います。私自身は「これからの私の人生で、今日この日が、私の一番若い日」と思っています。「六十の手習い」という言葉もあります。「もう」と言わずに「今、これから」とお思いになりませんか?

(所長 林 光行)

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